販売品について

楽器の鑑定

弦楽器の鑑定については大変難しい問題があります。所有者からすれば自分の楽器がどんなもので、どこで作られて、どのくらいの価値のあるものかは気になるところです。
しかし、数千万円のオークションで販売記録がある、又は所有者の正確なレコードの残っている名器以外は、夢を壊すようですが、保証書/ラベルについては、非常に曖昧だと考えたほうがいいのです。楽器によってはロンドンの有名店で取り引きがあったと言うレシートが保証であったり著名、無名な方によって以前発行された鑑定書がついている物が数多くあります。

現代でも有名な方で、鑑定書を作成する“仕事”をしている方がおります。しかしそれらはあくまで販売する側の作成したもので思惑を含んだものです。
正直、今までの経験上、鑑定の話はその楽器の年代別で最高級品のレベルの販売価格でない限り意味がないことだと感じています。バイオリン・ビオラでは、コンテンポラリー150万以上、モダン1000万、オールド2000万、チェロではこれの1.5倍から2倍とみていいでしょう。極論ですが上記以外は、鑑定に関して真偽を問えば、どこかしら不明な点が出てきてしまうのです。当然販売価格が下がれば下がるほど、本物からは鑑定に要する要因からは遠くその真贋の確率は低くなります。又は、無名の製作者の物であったりします。
つまり一般的な価格で購入できる楽器は、鑑定による真偽について気にするのはすでにナンセンスと思うべきでしょう。実際、本物であるという定義自体も、難しいところです。無名の方は、証明のしようがないですししても価値については変わらないのも事実です。

例えば、親方が一人で作成したもの、これは本物です。直弟子が作ったもの、名人の工房のスタッフや回りの修理屋などが同年代に製作した物、習っていないが真似をして同じ地域の材料を使用したもの、後に有名なので一生懸命コピーした物など有名であればあるほどたくさんの方がかかわった可能性があります。どこまでを本物と呼べるでしょうか?もし同じような音色がしたら、そして値段がまったく違うものとすればどうでしょう。
当然、本物でも音色の悪いものは、いくつも見てきました。また無名ですが、非常にいい音色をしたものにも出会いました。だから、上記に示した高額な金額で購入しないのであれば鑑定(ラベル)にとらわれないで物として、道具として弦楽器をみることをお勧めします。すべての条件を、満たされるものは上記に書いた最高級品です。これは道具というより、美術品です。プロの演奏家の方を除けば、道具としてよりは所有感を満たすものだと思います。

ロンドンを本拠地とする老舗オークションは、道具のレベルを公平に判定します。もちろん、ここで本物と判定されれば全世界で通用するものです。しかし、価格は目が飛び出るほど高いのです。そこでは、それと平行してそれぞれのレベルに振りわけられ評価がつけられた楽器たちが、オークションに掛けられて価格が決まります。
その価格が楽器の標準の評価になります。それは色々な要素によって値がつけられまして、本物でないものはすべて安いわけではありません。つまり本物かどうかという鑑定にとらわれるのではなく、物(音色や好み)としての価値をいくらかと見ているものもあります。その物の道具としても価値を見極めることが肝心かと思います。その為に、オークションというシステムは非常にうまく機能していると思います。この商売をやっていていつも感じるのは、ラベルは、簡単に作れますが、音色は作れません。それぞれの個性があり特徴が在ります。

ストラッドでは、音色にある意味価値を見い出してます。楽器ですので美しい音の出る物はやはりいいものだし、美しい音のでない物はどんなに高くとも良品ではないのではと思います。