販売品について

創業者の思い

20代から数えて70過ぎまで、半世紀あまりアマチュアの立場でどうやったら美しい音色が出せるかを試し訓練し、また良い弦楽器とはなんであるかを勉強、探求してきました。

若い時代は、楽器は宮本金八さんのものを使用して満足していましたが、60才を間近にひかえたころ、もうあまり楽しむ時間もなくなってきたので、贅沢ではあるが少しお金を出して素晴らしい音の出る楽器を手に入れよう、と東京を中心に楽器屋さん廻りを始め、数本購入してみました。

結果は、率直に高いわりに良くない音だと私は感じました。まず、1990年前後でバブルの影響もあり、楽器屋さんの敷居が高く予算を言わないと楽器さえみせてくれませんでした。また値段も人を見て決めるようなところもあり、販売システムも、明確だとは感じられませんでした。つまり楽器屋さんには不満をたくさんかかえた一人の消費者でした。

この業界の事を勉強し判り始めると、楽器屋さんは問屋さんから仕入れ、問屋さんは現地のブローカーや、商社の人などから仕入れることが多い様だという事がわかりました。最終的には工房(イタリア・クレモナ等)から直接買う方法もありましたが、大多数はロンドンのオークションで落札されたものが全世界の楽器商の手に渡り出回っていました。いずれにせよ何段階かの流通段階を通って商売が成り立つ状況でした。

そこで、その当時は珍しかったですが、皆さんが一度は考える直接オークションでの買い付けをしてみようと思い立ちました。初めてのときは、経験もなく内心はどきどきでしたが、一つだけ通常とは違う事をしてみたのです。それは1回目で目をつぶって勢い良く10数本を買い付けました。根拠はありませんでしたが、その方が良い楽器が手に入るのではという自分の勘がそうさせました。結果は、弾ける状態の物もあれば修理をしなければいけないものもありましたが、結果は自分の想像以上の物が手に入りました。カルチャーショックを受けたのです。私は確信いたしました。いいものが適正に公平に手に入る、唯一の手段であると。また、オークションが世界で唯一公平に楽器の格付け出来る機関だと知りました。オークションえは全世界の買い手がその楽器の価値を公平に取引し価格を決める仕組みだからです。

ただしその後随分と失敗と成功を繰り返し、いろいろ学びながら、300本を超える楽器、弓数百、小物などを約5年間の間に仕入れました。それだけの財力を投じれば世界で通用する名品が十数本手に入ったかもしれません。しかしそういった高額商品にはあまり興味が湧かなく、むしろ弾いて楽しく手頃な価格で購入できる物に興味があったのです。手に入れたものを見て、考えて、修理して、場合によってはわざとほったらかししたりして試行錯誤を続けています。それは自分が感じた矛盾への挑戦でもあります。

私は、車を買うぐらいの価格でいいものを提供できないだろうか?と常に思っています。それは、自分が経験したように、購入する側の予算組みで限界があると感じたからです。たくさんお金を積めばいい音が出て誰にも文句の言われようのない名器が手に入る可能性は高いでしょう。しかし、楽器は音楽を楽しむ道具であると思います。お金を積まないと楽しめないものではないはずです。その考え方に共感してくれる方が、プレイヤーの中に必ずいるはずと思っています。その方に、私が選んだ物が気に入ってもらえれば幸せだなと思っています。
それが、私が楽器屋を始めた原点です。