販売品について

弓の良し悪し

弦楽器を演奏するにあたって、楽器の他に当然弓が必要となります。すばらしい演奏をするのに、まずは弦楽器自体のレベルも大切なのですが、弓もこれまた音には影響しているものです。プロ級の腕前の方は別にして一般の演奏者は必ずといっていいほど、ある程度の演奏技術を手にすると、もしかして弓が違えばもっといい音色が出せるのではないか?と言う考えが頭の中を巡ります。弦楽器自体は、自分のある程度気に入った物を購入されているはずですが、弓はどちらかというとサブの道具として考えられている為、予算内で手にはいる物を選ぶことが多いからでしょう。

そこでほとんどの場合は、たくさんの弓を試す機会に恵まれるわけもなく、我慢しながらまたこんなもんでしょうと納得しながら使用されているのが多くの方々の現状でしょう。しかし、お客様と接していて、弓を変えるだけでずいぶんと演奏の音色が変えられるものだなと感じます。特に、技術的にレベルが低ければ低いほど弓の良し悪しの影響が出てしまう様です。そこで、ここでは弓を購入される際に気にしなければいけない点をいくつかお伝えしたいと思います。

最初に、本体の素材について気を配りましょう。弓の場合、この点が大きく品質に影響してきます。価格の問題はありますが、許されるのならば『フェルナンブーコ材』にこだわりましょう。それはその材で作られた弓は、耐久性・強さ・美しさ等々すべてにおいて優れているからです。ただ厄介なことに、その材とそっくりなブラジル材と言うもので作られた弓もたくさん出回っているのです。一説には、この二つは同じカテゴリーで扱ってもいいぐらい似ている物で、ブラジル材の最高級品がフェルナンブーコといわれる場合もあるそうです。

なぜフェルナンブーコが、素材として最適なのでしょうか。弓は作りのフォルムがスリムでシャープなものが扱いやすく、良い音を出しやすいと言われています。そのフォルムを実現しなおかつ引っ張られる強度に耐えられるには、結局良材でなければ弓の使用強度に対してもたないのです。弓の製作の際に、いい材であれば有るほど本体をシャープに作ることが可能ですし仕上がりも美しくなるのです。いい弓は、必ず上級材で作られています。悪い材で作って弓の強度を保てないからです。形がなんとなくボテッとしていたり、ある部分が厚かったりするものは、フェルナンブーコ材で作られたものではないのでは?と疑った方がよいでしょう。当然、現代のメーカーや工業製品で素材をうたっている商品は、問題なくフェルナンブコーを使用しています。古い(100から150年)の物で、ある一定の価格(小売30万以上)の商品は殆どがその材で作られています。(ただし良心的なお店)

次に各パーツについてですが、これは弓のバランスに微妙に影響するもので、後でお話する重さに関して大きく影響してきます。またその弓が高価で有るかどうか(良し悪しは別)は、各パーツが何で作られているかで解ります。指の掛る巻の部分ですが、最上級は鯨のひげです。しかしこれは現在新しくは当然手に入らないもので、大変貴重です。その他に、ニッケルの金メッキ、銀/金糸等が有りますが、どうやら金ですと重すぎる場合があるようです。ハコと言われる部分は、ほとんどはコクタンが使われていますが、古いものの中には、ベッコウや象牙を使ったものも有ります。これも鯨同様です。指のかかる革の種類も当然それなりに区別があります。現代の評価では、バランスを考えると、パーツはコクタンと銀製のものが良いとされています。毛については、信用できるところに毛換えを頼み、品質は価格で区別されればいいと思います。何処何処産といっても、見分け方はプロでもかなり難しいものです。

種類 長さ 重量
ヴァイオリン 730mm 60g
ビオラ 730mm 67g
チェロ 695mm 75g
スクリューを除いたスティックの長さ

弓について大変重要な要素は、やはり重量と長さでしょう。これは、単純なので計るなり問い合わせるなりされた方が良いでしょう。

基準としては表の様になります。許容範囲は、長さで前後2mm、重さ前後2gと言われています。バランスについては、調整によって変えられるのでそんなにはシビアでなくて良いのですが、だいたい240~250mmぐらいの所にくるものが良いようです。

憧れのオールドの弓についてですが、有名な物にサルトリー、トルティー、ぺカットなどがありますが、その当時(1700年末~1800年前期頃)のホールの大きさや奏法が基準になって作成されているのですが、現在でも通用する、エイジングの中で独特の味がある音をだせて、演奏の際に奏者がかけたエネルギーが心地良い感じの音に転換する率が高いと言われています。トッププロは、表現力が命でしょうから特に弓のいいものを求める傾向は、強いと思います。ではどのくらいの価格帯の物が、適正かということですが、初級者や、本体の楽器にもあまりにこだわりのない場合は、メーカー製や中国製の腰のあるもので10万円ぐらいまででありますのでその中から選ばれるといいでしょう。少し道具にもこだわりがあり本体も良品のものをお使いの方は、やはり30万円ぐらいから上の価格で、古いものが(50年から100年ぐらい)より演奏の幅を引き出してくれる思います。上級、プロの方や道具にこだわりがありいい物を所有されたい方は、予算を100万円前後組まれれば、かなりの選択肢がえられるでしょう。楽器と同様ですが、有名作者の名品で、老舗オークションで真作として扱われているものは、小売価格で日本円換算300万円からになると思います。

以上の点を、押さえて探されるといいものに当たる確率は上がると思います。最終的に弓は、表現上非常に重要なアイテムなのでとにかく、自分にとって扱いやすいものを選ぶ事が一番大切です。楽器屋でも、案外弓はいいものが埋もれている事が多いように思います。お店自体も本体に気を取られて気づいていないのです。弓に目をむけて探されると期待以上にいい結果が得られるかもしれませんよ。