古い弦楽器を選ぶ際のアドバイスと知って得する弦楽器の特徴や成り立ち

楽器のサイズ

楽器を選ぶ際に何が重要かと言うと、『サイズ』です。それがいろんな意味で我々に教えてくれる事が多いと、いつも感じています。楽器の善し悪しや、オリジナルかどうかなど一番わかりづらいところもサイズを突き詰めていくと案外選ぶ際の基準が見えてきて自分なりの答えはでてくるものです。

ヴァイオリン

数年前の話ですが、こういった事がありました。当店の知り合いの方から、「あるプロオケ所属の方が楽器を購入したのでみてやってくれないか?」と依頼をうけました。物は、コンテンポラリー(現代作)のバイオリンで、その頃作り手としては最高峰との評判を受けている方の製作されたものでした。日本の市場でも現代手工品の中で、「誰の物が最近はいいのか?」という話題には必ず登場する方のものでした。パッと見の外見は問題なくきれいなもので、ラベルも当然その方の名前の刻まれたものでした。ところがスケールをあててみるとサイズが違うのです。絶対的なことは言えませんが、最高の作り手が丹精込めて作った物のサイズが現代認知されている標準値からかけ離れて違う事が有るでしょうか?また、それを本人が自分の作品として世にだすでしょうか?結局、よくサイズをはかり、そこから発生する不具合を指摘してあげました。

サイズは、1700年前半に数名の名工達が辿り着いた究極のかたちです。それをすべての人が、摸倣をして現在迄の歴史があるのです。摸倣した人の中には天才もいて、有名な方では、パノルモやプレッセンダ、ロッカといった人々は作風や技術を先代の名人から模倣し自分の名前を出さないで先生の影になり製作した楽器も存在します。後年、自身の評価が高まり、それ自体で確立されたブランドとして扱われています。やはりそれは道具として優れていたからでしょう。つまり本物やそれに非常に近い弟子達の作った物に、サイズ違いはあり得ないと考える方が自然ではないでしょうか。サイズ違いを師匠が弟子に許すでしょうか?正義のある職人は、自分の作品でサイズは守ろうとするのではないでしょうか?サイズが極端に違和感のある楽器は誰かが悪意を持ってそれを何かに利用しようとしたか、弟子達が師匠を裏切ってそのブランドをつけたとか、周りの誰かや、その高名さに寄りかかり偽物を製作したと考えることができます。

そういう事が250年前から現代まで繰り返されている歴史で、真偽を問うのはなかなか難しいことになってしまっているのが事実です。ではどうやってその楽器の価値を判定するのか?と言う点で、『サイズ』が重要になるのです。真偽は、問えなくともサイズが正確な物は良い楽器である可能性が高いのです。だから道具としての楽器は、サイズが重要です。楽器の判定の際、まずメジャーをあてます。そして、全体の作りに違和感がないかどうかみます。その後弾いてみて音色を確かめます。そしてラベルなどでわかる製作時期、細部の造り、ニスや付属品等をチェックします。
修理の際も、サイズを調整することが一番重要だと考えています。修理は、サイズの調整が主な事です。あまり良い音がしない楽器でも修理をほどこした後に、すばらしい音を出す物が案外存在します。

またサイズが正確であると言うことは、弾き手にとって重要な事です。指板の長さや、弦の高さ等 技術があがればあがる程重要になってきます。弾き手の方は、意外にもそのサイズについて気にされない傾向が強いように思います。サイズが合っているものは、それだけで道具としては、優秀なものとして弦楽器商売に携わる専門家のなかでも評価が高くなることが多く見受けられます。

ラベルや色や、些細な傷などに気を奪われることなく、まずはサイズをチェックしてみてください。それだけで、どこの楽器屋さんでもひと味違う対応をされることでしょう。それは楽器屋にとって楽器を判定する一番大切な尺度はサイズだからです。

以下、バイオリンのサイズの許容範囲を重要な順に書いておきますので参考にして頂ければと思います。

  • A.本体サイズ:355mm ±3mm
  • B.本体からf孔の内側の切り込みまで(ボディストップ):195mm ±2mm
  • C.糸まくらから本体まで:130mm ±0.5mm
     ※バイオリンの名器で古いものは、比較的ボディーサイズが小さいものが多くあります。
     (最低350mm以上は必要とされています。)

ビオラ

次にビオラです。これはなかなか決まったサイズがなく、サイズによって判断するのは難しいところがあります。ただし一定の法則はあります。そこからくる守るべきサイズが大切になってきます。
ビオラの場合ボディーサイズがまちまちなので上記の写真サイズで、B:C=3:2という比率が守られていることが重要です。例えば、Bが22mmの場合Cは14.6mm ±1になります。これが違いますと、音程の取り方に不具合がちょうじるだけでなく、弦の張力の設定に逆らうことになります。本体のサイズは、40.5mm以上、以下で区別できます。以上のものは大柄な日本人、欧米のからだも大きく手の大きい方向けです。一般の日本人は、以下のサイズをお勧めいたします。当然サイズが大きいほうがビオラらしい音色になりますが、大きすぎる(43.0mm以上)楽器はプレーヤーに対して負担が大きすぎるので体力的にも演奏には向かないと思います。その他
は、だいたいバイオリンと考え方は一緒です。

チェロ

最後にチェロですが、これもビオラと同様、出所年代によってサイズがバラバラです。但し、同様に守るべきサイズがあります。
上記写真のサイズで、

  • A:750~760mm(これは、ストラッドの好むサイズで、絶対ではありません。)
  • B:400mm ±10mm
  • C:280mm ±5mm

チェロは、傾向として、イギリスは小ぶり、フレンチ、ドイツ(東欧含む)は大きく、イタリアンはその中間で古い楽器(200年前頃)は手作りのため極端に個体数が少ないです。バイオリンやビオラよりかなりチェロはサイズが大きいので、その分サイズについても許容範囲は広くてもいいと思います。注意:すべてのサイズは駒の足に関して、中心で測ることが基準となっています。