古い弦楽器を選ぶ際のアドバイスと知って得する弦楽器の特徴や成り立ち

楽器の鑑定

弦楽器の鑑定については大変難しい問題があります。所有者からすれば自分の楽器がどんなもので、どこで作られて、どのくらいの価値のあるものかは気になるところです。
しかし、数千万円のオークションで販売記録がある、又は所有者の正確なレコードの残っている名器以外は、夢を壊すようですが、保証書/ラベルについては、非常に曖昧だと考えたほうがいいのです。楽器によってはロンドンの有名店で以前に取引がありそのレシートが保証書(鑑定書)として付随するものなどがあります。この場合はまだ判断基準として成り立つ事もあります。他には無名な方(お店)が独自の判断で鑑定した楽器に独自証明書として発行された書面が鑑定書としてついている事が数多くあります。これはそのお店の価値判断で市場では通用しない場合が多いと認識してください。それは、お店の勝手な思い込みや販売するための方便という解釈が正しいといえます。現代でも有名な方で、鑑定書を作成する“仕事”をしている方がおります。しかしそれらはあくまで販売する側の作成したもので思惑を含んだものです。

正直、今までの経験上、鑑定の話はその楽器の年代別で最高級品のレベルの販売価格でない限りあまり意味がないことだと感じています。本物として扱ってよい楽器の現代の相場観ではバイオリン・ビオラにおいて、現代作のイタリアンで250万円以上、フレンチ200万円前後以上、その他産地製作では100~200万円前後となります。
モダンでイタリアン800万円以上、フレンチ300万円以上、その他産地は判定が難しく個体によりバラバラで相場観は示せません。オールドではイタリアンは2000万円以上、フレンチオールド500万円以上、その他産地も個体によるので判定が複雑です。チェロに関しては、古くなればなるほど個体数が極めて少ないのでざっくり上記の2倍と考えても良いでしょう。

上記金額や条件を越えるようであれば鑑定書や真贋や販売店の信用度などにはこだわる必要がでてくるかもしれません。極論ですが上記条件から外れる楽器は、鑑定に関して真偽を問えば、どこか不明瞭な点が出てきてしまうのです。当然販売価格が下がれば下がるほど、本物からかけ離れていき真作である確率は低くなります。そういったものはダメな楽器かというとそうではなく、古い昔誰かに楽器製作を教わった工房や人物にて手がけられたもので、多くはその当時かその後暫くして誰かが有名なラベルを貼って流通し何かの理由で譲り受けた楽器等となります。その楽器達が戦争や混乱等をなんとか切り抜けて生き残り現代のオークションなどに登場するのです。
つまり一般的な価格で購入できる楽器は、鑑定による真偽について気にするのはすでにナンセンスと思うべきでしょう。実際、本物であるという定義自体も、難しいところです。無名の方は、証明の術がないですし真贋の価値についても判定出来ない事が殆どです。大昔の話です。そのため、そう言った楽器は古さや状態や予想産地などでオークションの予定価格は決まってきます。その落札価格により段階的に販売価格は市場原理に沿って決まってきます。

次に、真贋の定義について考えますと例えば、親方が一人で作成したもの、これは本物です。直弟子が作ったもの、名人の工房のスタッフや回りの修理屋などが同年代に製作した物、習っていないが真似をして同じ地域の材料を使用したもの、後世に有名な製作者の楽器を一生懸命コピーした物など有名であればあるほどたくさんの方がかかわった可能性があります。どこまでを本物と呼べるでしょうか?もし同じような音色がしたら、そして値段がまったく違うものとすればどうでしょう。
当然、本物でも音色の悪いものは、いくつも見てきました。また無名ですが、非常にいい音色をしたものにも出会いました。だから、上記に示した高額な金額で購入しないのであれば鑑定(ラベル)にとらわれないで物として、道具として弦楽器をみることをお勧めします。すべての条件を、満たされるものは上記に書いた最高級品です。これは道具というより、美術品です。プロの演奏家の方を除けば、道具としてよりは所有感を満たすものだと思います。

ロンドンやニューヨークを本拠地とする老舗オークションは、道具のレベルを公平に判定します。もちろん、ここで本物と判定されれば全世界で通用するものです。しかし、価格は目が飛び出るほど高いのです。そこでは、それと平行してそれぞれのレベルに振りわけられ評価がつけられた楽器たちが、オークションに掛けられて価格が決まります。
その価格が楽器の標準の評価になります。それは色々な要素によって値がつけられまして、本物でないものはすべて安いわけではありません。つまり本物かどうかという鑑定にとらわれるのではなく、物(音色や好み)としての価値をいくらかと見ているものもあります。その物の道具としても価値を見極めることが肝心かと思います。その為に、オークションというシステムは非常にうまく機能していると思います。この商売をやっていていつも感じるのは、ラベルは、簡単に作れますが、音色は作れません。それぞれの個性があり特徴が在ります。

ストラッドでは、音色にある意味価値を見つけて真贋に関しては元々不確かなものととらえています。楽器ですので美しい音の出る物はやはりいいものだし、美しい音のでない物はどんなに高くとも良品ではないのではと思います。